0111 授業研究からの学び     TOPへ戻る

はじめに
山梨県学力向上拠点形成事業拠点校の公開授業を参観して気づいたことを以下まとめました。授業を提供してくださった先生へのお礼と、授業を作り上げる上で重要なポイントの整理もかねたものです。

011102 H19.11.22(木)…市川中公開「長田せつ子」先生の「論語」の中三の授業…小集団学習を生かすには

普段の授業の積み重ねがあればこその授業

@授業の始まる前に時間があったので、既習教材の奥の細道の一節を、全体で一斉音読
…長田先生がどの教材を音読したいか生徒に尋ねると、あちこちから「奥の細道」という生徒の声。これだけで、生徒たちは普段から音読を意欲的にとりくんでいるのだろうと、わかる。
…長田先生は、音読のスピードを生徒に決めさせるために/普通の速さ/はやめの速さ/の二通りの読み方を実際に生徒たちに聞かせた。生徒たちが「この速さで読みたい」と反応して、読みの速さを全体で確認した後、一斉音読を始めた。同じ一斉音読でも、スピードを調整できる力を生徒たちにつけたいという長田先生の願いがこめられているように感じた。
Aウオーミングアップの小テスト
…黒板の左端を使って前時の復習をかねて「歴史的仮名づかい→現代仮名づかい」の小テストを実施
…@曰はく A習(なら)ふ Bもつて Cすなはち Dあやふし 五問テスト
…生徒たちは、慣れた様子で、ノートに問題をうつし、現代仮名づかいを書いていった。四問以上正解の生徒がほとんど。基礎的な力が、身に付いているのを、感じた。
…Aは「なろう」と読むことを、長田先生は「au→ou」と板書して確認していた。口頭で「ならう」という読み方でもよいことを確認したが、生徒の中には「ならう」を×として「なろう」と訂正しているものもいた。二通りの読み方ができる場合は、押さえをしっかりする必要がある。
Bどの生徒も丁寧な字でプリントに書いている。
…研究会で「丁寧な字で書く生徒が多いと感じたのですが、何かなさっているのですか?」と質問したところ、作文を書かせたときに、文字を根気よくチェックして赤ペンをいれているという裏話を伺った。長田先生の話では「2年生の時から指導を入れ続けて、現在ではほとんどの生徒が文字が丁寧になっている」とのことで、やはりねばり強く指導することができるかにかかっているようだ。長田先生の板書の文字は、国語の先生にふさわしい整った文字であり、生徒たちが丁寧な字を書く手本にもなっている。やはり、教師が書く文字が常に丁寧でないと、生徒たちの文字も丁寧にはならないというあたりまえのことを再認識した。

小集団での学習の有効性と答えを収束させる授業運営法

@本時の授業は「訓読文を書き下し文に直す」という学習活動がメインだった。ワークシートを使って個人で「訓読文を書き下し文に直す」作業をした後、4人の小集団で確認し合うという授業の組み立てであった。生徒たちは、個人学習の後、スムーズに小集団の学習に入っていった。男女の中もよく、お互いのプリントを見せ合いながら確認しあっていた。
…小集団学習に入るスムーズな様子から、普段から小集団学習を取り入れた教え合い・学び合いができていると感じた。
…では、課題はないのかというと、本時の授業においては乗り越えなければならないところがあった。それは、「訓読文を書き下し文に直す」という学習の場合、答えは収束していかなければならないのだが、小集団学習の中で、生徒の答えは分裂したままであった。

A私の気づいた生徒の分裂と、分裂を収束させるための授業運営法

[分裂A]
・己の欲せ不(ざ)る所は  …「不」に「ざ」とよみがなをふっている
・己の欲せざる所は
・おのれのほっせざるところは …授業研究会の中で、ひらがなで書き下し文を書いていた生徒がいたというので、追加

[分裂B]
・学びて而思は不(ざ)れば  …「不」に「ざ」とよみがなをふっている
・学びて思はざれば
・まなびておもわざれば …授業研究会の中で、ひらがなで書き下し文を書いていた生徒がいたというので、追加

[分裂C]
・人知ら不(ず)して   …「不」に「ず」とよみがなをふっている
・人知らずして
・ひとしらずして …授業研究会の中で、ひらがなで書き下し文を書いていた生徒がいたというので、追加

小集団学習に入った後、長田先生は、グループの様子を確認しながら個別指導を行った。残念ながら、全体で確認する場面はなかった。本時の場合は、訓読文を書き下し文に直すルールについては確認せずに、個人学習→小集団学習に入っていった。当然、分裂は起こるべくして起こった。

そこで、小集団学習に入ってすべきことは、/どのような分裂(食い違い)が、メンバーの書き下し文にみられるのか/という点の確認であろう。その食い違いを、グループごと全体学習で明らかにするステップが、必要であった。そうすると、次のような分裂があきらかになる。

[分裂A][分裂B][分裂C]に共通する相違点としては
・漢字をまぜないで、平仮名だけで書き下し文を書いている。←→・漢字と平仮名をまぜて書き下し文を書いている。
・不という漢字を使っている。←→・「ざ」あるいは「ず」と「不」を平仮名に変えている。
[分裂B]のみの相違点としては
・而という漢字を残している。←→・而という漢字を省略している。

この分裂の相違点をもとに、訓読文を書き下し文にするときのルールを全体で確認する。次のようなことが、押さえられるだろう。
@基本…訓読文の漢字は、漢字。カタカナの送りがなは、ひらがな。ただし、歴史的仮名づかいのカタカナは、そのままひらがなで書く。
A例外…漢字でなくひらがなにする漢字がある。(漢字をひらがなにすることを「開く」というらしい。)日本語の助動詞にあたる「不」(「也」「可」)は「ず・ざり」(「なり」「べし」)とひらがなにする。(日本語の助詞にあたる「乎」は「や」とひらがなにする。)
B例外…置き字。読みもしないし、書き下し文にも書きもしない。「而」。

上の/訓読文を書き下し文にするときのルール/を確認した後、自分の書き下し文を見直し、最終的な確認を小集団学習でおこなうというステップで、授業を運営していけば、たぶん分裂したままでなく収束できたであろう。

おわりに

小集団学習を普段の授業に取り入れる場面
…個人学習で自分の答えをもてた時点で、答えの分裂を確認したいとき。
…メンバーの答えが正しいか、チェックしたいとき。

(記 2007.11.23)


人目のご訪問、ありがとうございます。 カウンタ設置 2007.11.25