010808  古典文法(動詞の活用)を中学生に教えるヒント    TOPへ戻る

はじめに
学び合いのブログ「 みんなでやれば何でもできる〜イマキヨ日記 - 『学び合い』」に、中学3年生・古典 の授業で、動詞の活用について教えたときの授業メモが掲載されています。
中学3年生・古典 …1時間目 文法編・活用@
http://manabiai.g.hatena.ne.jp/ima-kiy/20090412/1239468447
中学3年生・古典 …2時間目 文法編・活用A
http://manabiai.g.hatena.ne.jp/ima-kiy/20090417/1239956526

なるほど、中学生に古典の文法を教える実践をなさっているんだと、いうことで、私も少しだけ似たようなことをしましたので、その紹介をします。ここでは、少し授業で教えた内容を、整理し、改良した形で提案します。


中学生に教える古典文法とは
一応中学二年生は、現代語の動詞の活用の種類などは学ぶことになっています。そこで、現代語の動詞の活用表の復習をしつつ、それを文語の動詞にあてはめるとどうなるかという視点でミニ古典文法動詞の活用表づくりをやってみました。

まず、現代語の動詞の活用表を、下にどんな言葉が付くと未然形かなどと生徒に尋ねながら次のような表を作成しました。

未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 活用の種類
現代語
泣く
泣かない 泣きます 泣く 泣くとき 泣け 泣け 五段活用
泣こ 泣い
泣い

次に、古語の動詞の活用表の枠組みを資料集で確認させました。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の種類
                                 
 
 

違いはないか確認すると、現代語では「仮定形」があるのに、古語の活用表にはなく、「已然形」になっていることに気がつきます。
そこで、古語では「仮定形」はない。古語では「已然形」という形がある。それは、古語の已然形「○○ば」の表す意味が、現代語の仮定の意味をもたないからである。已然形「○○ば」の意味は、理由などを表わす、と説明。さて、古語で仮定の意味を表わすにはどうしたらよいかというと、実は、もう一つ別の「○○ば」の形が古典にはあったのです。それは「未然形+ば」。「泣く」では「泣かば」という形です。といって、下のように書き込む。古典では、「○○ば」の形が二つあり、表す意味が違うということを覚えておいてください。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の種類
古語
泣く 
                    
 
泣か 泣け
現代語
の意味
泣けば
泣いたら
泣くので
泣くと
 

では、現代語「泣かない」を、古典語にするには「ない」の代わりに「ず」を使います。「泣く」に「ず」をつけると、どうなるか分かりますか。→「泣かず」→表に書き込む。
現代語「泣こう」を、古典語にするには「う」の代わりに「む」を使います。「泣く」に「む」をつけると、どうなるか分かりますか。→「泣かむ」→表に書き込む。
これが、古語の未然形です。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の種類
古語
泣く 
泣か                     
泣か  
泣か 泣け
現代語
の意味
泣けば
泣いたら
泣くので
泣くと
 

次に、連用形。現代語「泣きます」に該当する古語もありますが、難しいので省略します。現代語「泣いた」を、古典語にするには「た」の代わりに「たり」をつけます。「泣く」に「たり」をつけると、どうなるか分かりますか。→「泣きたり」→表に書き込む。
現代語では過去を表わすには、「○○た」一つですが、古典語では、実は「過去」を表わす表現は、「泣きたり」以外にもたくさんありました。知っておくと便利ですので、紹介します。「けり」「き」「つ」「ぬ」などをつけます。といって、表に書き込む。
最後に、文の途中でつなげる形の「○○て」も連用形です。といって、「泣きけり」「泣きき」「泣きつ」「泣きぬ」と、表に書き込む。これらは、おおざっぱに意味をとると、「泣いた」という意味になります。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の種類
古語
泣く 
泣か 泣きたり               
泣か 泣きけり  
泣か 泣き 泣け
泣き
泣き
泣き
現代語
の意味
泣かない
泣こう
泣けば
泣いたら
泣いた 泣くので
泣くと
 

では、最後、終止形・連体形・命令形は、現代語と同じです。といって、「泣く。」「泣くとき」「泣け!」を表に記入。
古語では、「泣か」「泣き」「泣く」「泣け」と四つの形があるので、四段活用といいます。といって、表に書き込む。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用の種類
古語
泣く 
泣か 泣きたり 泣く 泣くとき 泣け 四段活用    
泣か 泣きけり  
泣か 泣き 泣け
泣き
泣き
泣き
現代語
の意味
泣かない
泣こう
泣けば
泣いたら
泣いた
泣いて
泣く。 泣くとき 泣くので
泣くと
 泣け!

さて、この活用表は、古典を読むときの基礎知識として定着させたいことを体で覚えさせるためにも活用できます。やり方は、次のとおり。
[その1]この表を見ながら、先生が古語を言い、生徒に現代語で答えさせる。
先生… 泣かず     生徒… 泣かない
先生… 泣かむ     生徒… 泣こう
先生… 泣かば     生徒… 泣けば(泣いたら)
先生… 泣きたり    生徒…  泣いた
先生… 泣きけり    生徒…  泣いた
(以下 同様に)
[その2]この表を見ながら、先生が現代語を言い、生徒に古語で答えさせる。
(その1 の やり方を 逆にすればよい)
ただし、「泣いた」は、五つ古語があるので、「泣いた けりで」「泣いた つで」などと工夫すればよい。
[その3]アトランダムに出題することもよい。

終わりに
高校では、本格的に文語文法を学ぶことになるのですが、このような形で、文語の動詞の語形に親しんでいれば、多少なりとも文語文法に入りやすいのではないかと思います。ご意見をいただければ、ありがたいです。


(2010.02.13 記)


人目のご訪問、ありがとうございます。 カウンタ設置 2010.02.13