人目のご訪問、ありがとうございます。 カウンタ設置  2004.9.7

0701 みんなの情報発信コーナー

このページは、みなさんに原稿を提供していただいたものを公開しています。授業プリントや教材分析や授業案など公開してもいいぞという方は、ぜひ原稿の提供をお願いします。

070101 国語教育

07010101  読み研通信(第68号  2002.7.1)  掲載原稿      TOPへ戻る

はじめに


   読み研通信第68号に偶然「クジラたちの音の世界」に関わる原稿が2本掲載されました。1本が私のもの、もう1本が五十嵐淳先生のもの。
興味深いことに、構造よみに関わって五十嵐さんと私の分析は異なっています。その違いは、第1段落をどのように読むかに関わっています。説明文の構造よみについて考える材料になると思い、私のホームページで2本とも掲載しています。お読みいただき、ご意見をお寄せいただければ、うれしいです。
   私の原稿は、010102 読み研通信(第68号  2002.7.1)原稿2「クジラたちの音の世界 」(光村・中1教材)  。

   以下の原稿は、五十嵐淳先生のご厚意によってここに掲載することができました。五十嵐先生に感謝します。


説明文「クジラたちの音の世界」(中島将行・光村中一)の教材分析と授業構想
                            五十嵐 淳  新潟県新津市立新津第一中学校

一、教材分析

T、表層のよみ

1、語句・語法 (省略)
2、文種   説明文
【理由】
 クジラの発する音の研究は進んでおり、「クリック」「ホイッスル」といった音の種類も海洋生物学では定説になっているものである。

U、深層のよみ

1、構造よみ

前 文 1段落
本文T 2〜9段落(柱は2段落) 「クジラの発する音の優れた働き」
本文U 10〜12段落(柱は10段落) 「クジラたちが巧みに音を使う理由」
(後文なし)

【理由】
 1段落が前文として独立する。それは、「クジラ」に問題を限定してはいないにしても、1段落の@文「動物たちはそれぞれ特有の方法で、身の回りの情報を得たり、得た情報や気持ちをたがいに伝え合ったりして生活している」が、全体的な「問題提示」となっているからである。 しかし、「クジラ」が出てこないという「問題提示」としての弱さがある。したがって、1段落は2段落の「動物」のくわしい説明であり、前文なしなのだという読みが出てくる可能性がある。
 本文Tは、2段落の「海で暮らす動物たちは、どのようにして情報を得たり、伝えあったりしているのだろう。クジラを例に調べてみよう」が「柱」で、他がそれを詳しく説明する関係である。
 これに対して、2段落は文章全体を包括する「問題提示」なので、2段落までを前文とする読みが出てくるだろう。
 しかし、2段落の「問題提示」は、9段落までしか包括していない。
 文末表現をみてみると、2段落最後の文末表現「〜調べてみよう」に対応して、9段落までは調べた結果を述べる言い方になっている(たとえば3・4段落の記録文的な書かれ方や、9段落の最後「〜といわれている」という言い方)。それに対して、10・11段落は、10段落最後の「〜考えてみよう」に対応して、考えを述べ、最後にまとめる言い方になっている。つまり、2段落の「〜調べてみよう」が9段落までを包括し、10段落の「〜考えてみよう」が10・11段落を包括しているのである。
 さらに、この二つの段落の言い方はほとんど同じである。2段落の「〜調べてみよう」と10段落の「〜考えてみよう」が対応しているし、2段落は一つの文に、10段落は逆に二つの文にすることができるからである。つまり、2段落と10段落は並列の問いなのである。
 本文Uは、10段落の@文「それでは、クジラたちは、なぜこのように巧みに音を使って、〜なったのかを考えてみよう」が問いで、11・12段落はそれに答えている(くわしく説明している)。
 後文はないが、12段落のD文がまとめの雰囲気を持って文章を締めくくっている。

2、要約よみ

(1)前文(1段落)
 1段落・@+A(【要約】は省略)
(2)本文T(2〜9段落)
           6+7)
 2←{3+4+(5←    }
           8+9)
 2段落・@+A
 *矢印はすべて「くわしく説明」(【要約】は省略)
(3)本文U(10〜12段落)
 10←(11+12)
 *10を11・12が「くわしく説明」(【要約】は省略)

3、要旨よみ
 全体をまとめている後文がないので、前文・本文T・本文Uの要約をつないだものが要旨となる。

二、授業構想

1、生徒と教材

 一年生の初めなので、当然、構造よみの力はまだ弱い。「前文→問題提示、後文→まとめ・結論・つけたし」という指標も定着していないし、「柱」を見つける力も未熟である。指標をくりかえし教えるとともに、助言をていねいに打つ必要があるだろう。
 班の話し合いや挙手・発言の仕方あるいは全体討論でのからみ方など、国語の学習集団としてのルールやスタイルも身についていない。こちらも、授業のさまざまの場面で具体的にていねいに教えてやる必要がある。この教材を使った授業で、文章を読みこんだり討論をしたりすることの面白さを少しでも経験させたい。
 「クジラたちの音の世界」は新教材である。後文なしという変則的な構造であり、前文も「問題提示」としては弱さを抱えているので、中学一年生が学年の初めに構造よみをする教材としては難しいと思われる。
 前文については、たぶんほぼ全員が2段落までを前文とするだろう。そこで、その包括する範囲をめぐって追求させることになる。内容と書かれ方の両方にわたって考えさせたい。
 2段落が前文になれないことを明らかにしたあとで、1段落と2段落以降との関係を考えさせる。ここでは、1段落は前文になるにしても、「問題提示」の弱さを抱えていることに気づかせたい。
 後文については、10段落からを後文とする案、12段落を後文とする案、後文なしとする案に分裂すると思われる。2段落と10段落の問いが並列であること、12段落のD文はまとめではあるが本文Tを包括してはいないので後文にはなれないこと−を明らかにして、後文なしであることを押さえたい。
 要約よみについては、「柱」を拠り所として要約文を作る練習をさせる。この段階では、おおよそどれが「柱」か分かればいいので、段落どうしや文どうしの関係には深入りしない。
 本文T・Uともに「問い」が「柱」なので、こういう場合は、それに対する答えの部分を見つけ出して要約を作ることを教える。
 本文Tは「どのように」という方法・手段を述べるところなので、「クリック」「ホイッスル」という語と、その簡単な説明は欠かせない。本文Uでは、10段落の「なぜ音なのか」という問いに対して、11段落と12段落が並列の関係で答えているので、「目で見る情報」が頼りない理由と、音が「うってつけの手段」である理由をまとめさせる
 要約文全体で四百字以内におさまるようにさせる。

2、指導目標

(1) 説明文・論説文の構造よみの定式を 定着させる。
(2) 要約よみの初歩を理解させる。
(3) 学習集団としてのルールやスタイルを身につけさせる。

3、指導計画(五時間)

(1) 表層のよみ(漢字の読み・難語句の意味・新出漢字など)  一・五 時間
(2) 構造よみ     一・五 時間
(3) 要約よみ     二    時間